■産地状況
今年度の熊本作付面積は380ha(前年比15%減)、農家戸数は319戸(前年比22戸減)。品種構成では、涼風46%・みどり30%・はるか13%・夕凪その他が11%となるようです。
生産は最盛期となり市場出品は90点程。品種では涼風が約5割、みどり草が3割弱、はるか・その他で2割程となっています。荷動きはコロナ感染(第6波)の影響も伺え、必要分の手当が中心となっています。
また新草の特徴として平年より草丈が短く、長い草の割合が少ない事から本間類や上物を織る原料消化が早いようです。そのため、例年は織らずに原料で販売する一段下の選別い草を、今後生産する予定で確保されるところも聞かれます。
■せとなみ栽培の取り組みについて
試験的な取り組みとなりますが、現在4名の生産者のご協力を頂き、在来品種「せとなみ」栽培を開始しました。本田植え付けは15aと少ない面積になりますが、生育が順調にいけば畳表の生産は令和4年産として今秋入荷する予定です。今後、生育過程を報告していきたいと思います。
(元苗提供にご協力頂きました広島産地関係者の皆様にはお礼申し上げます)
(生育状況写真)
■生産者のご紹介
(1月号より弊社がお世話になっている生産者の方々をご紹介しています)
第2回目は赤星直裕さん(41歳)です。八代郡氷川町中島(旧宮原町)でご家族4人で1.6haのい草栽培に取り組んでおられます。また35aの野菜栽培(ブロッコリー、玉ねぎ、白菜等)もされており、旬な野菜を地元のスーパーや物産館に出品されています。
直裕さんは高校卒業後、熊本県立農業大学で工芸作物(い草、お茶、たばこ等)の栽培・加工を学び、卒業後は熊本県い業研究所(現:アグリシステム総合研究所)で2年間、家業を手伝いながら研修生としてい草栽培・畳表加工技術を習得し就農されました。今年でい草栽培21年目を迎えられます。
- 栽培品種:ひのみどり110a、はるか50a
- 織機台数:中村式5台
- い草選別:8段階(5種類を畳表生産、残りは原草販売)
Q:大変と思う事は?
A:暑い時期の刈取り、寒い時期の手作業での植え付け、また5月連休時期は杭打ち・網張りなど、農繁期では連休といった休みがなく、就農当初は大変と思う事もありました。(植え付けは昨年より移植機導入)
Q:良かったと思う事は?
A:畳店様からの声で「うちの畳表を使って良かった」という話を聞かせていただくと大変嬉しく思います。
Q:伝えたい想いなど
A:毎年、地元い業部の生産者6件で、小学校新1年生になる皆さんへ私達の作った畳表で座布団を製作して寄贈しています。子供達には小さい頃から、天然素材の畳表の香りや感触に触れてもらい、い草畳に慣れ親しんでもらいたいです。
Q:赤星さんの畳表は突き出し(耳毛)を短くした、地厚で目詰まりのある織り方と丁寧な仕上げが畳店様の人気を得ています。その特徴的な織りについて、父の睦生さんを交えお伺いしました。
A:自分が買う立場になった時、どういう畳表がいいのか?買って良かったと思うのか?と意識して製織しています。
耳毛は落としてしまうので、畳として仕上げられた時に、買った時のイメージよりワンランク上の商品として感じてもらえるような畳表を作りたい。
そのためのい草作りも大事で、あまり長くなくていい。実入りの良い草質、少し抑えた栽培を心掛けています。
以前、弊社産地研修の資料作りでご協力いただいた際に、1寸抜きで長さ選別されたものを頂いた事があります。
「収穫したい草を1寸刻みに選別する事で、先枯れの落ち・根白の上がり具合・どのあたりまで実入りがあるか確認できる。もちろん品種や田圃で内容も違うけど、これを目安にどの段階で抜き分けるか決めている」と教えていただいた事がありました。
この度は取材のご協力ありがとうございました。
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