カビ対策で実験(2022/5)

社員5名の家と会社2階和室に梅雨を前に畳替え

畳替え前の和室(B宅 2020年5月19日)
畳替え前の和室(B宅 2020年5月19日)

 天然のい草は畳替えをした1年目には、カビがきやすいと言われます。カビは栄養・湿度(70%以上)・気温(25℃以上)(数字は目安)の条件が揃うと発生します。これまでもカビ対策の実験を行ってきましたが、カビ対策のポイントは「換気と掃除」と考え、これを心がけるとカビの発生は見られませんでした。

畳替え後の和室(B宅 2022年5月19日)
畳替え後の和室(B宅 2022年5月19日)

 B宅では梅雨時期でも窓を開けて換気する生活スタイルですが、その家だけ、その生活スタイルだけに言えるのではないか?とも考えられ、同じ時期に住宅構造や生活スタイルがそれぞれ違う社員5名の家で、5名とも同じ材料を使って梅雨を前に行って、どのような結果になるかを実験してみたいと思います。

 社員5名の家の特徴、生活スタイルは、高気密高断熱の家や夫婦共働きで締め切りの部屋など様々で、その中で無理がない範囲で「換気と掃除」を心がけて経過を見てみたいと思います。環境は以下の通りです。

A宅:昔ながらの和風建築の座敷(1日1回空気の入れ替えしますが、人の出入りはほとんどありません)
B宅:昔ながらの和風建築の座敷(週2〜3回、人が集まる。雨の日でも窓を開けます)
C宅:鉄筋コンクリート町営団地の子供部屋(朝・夕空気の入れ替え、週1〜2回掃除、昼間は学校、仕事で人の出入りはありません)
D宅:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、洗濯物を干す部屋。)
E宅:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、日常生活には使用せず、部屋を通る程度。)
会社2階和室:試験的に様々な畳表を使用します。産地研修や来社の際にご覧ください。

品種による退色や耐久性の違い観察

使用した畳表
使用した畳表

 また5人の家に品種ごとの退色や耐久性も観察するため、4種類の品種で、2枚は無染土表も混ぜて敷き込みました。(部屋の写真の左右の両側が無染土)

 普通の畳表の染土を拭き取ると、無染土畳表との「色あいの違い」は部屋に敷き詰めた写真の通り思ったほど違いはありませんでした。

 ただし天然のワックス成分が効いて、少し滑りやすいです。また無染土は泥がない分、カビはきにくいはずです。

折ジワの変化

折ジワの変化も観察(2022/5/19)
折ジワの変化も観察(2022/5/19)

 また同時に折ジワの変化も観察してみたいと思います。高級品ほど折ジワがあると言われてきましたが、この程度の場合は、どれぐらいの期間で消えるのでしょうか?(写真はB宅)


張替え時の写真 A宅(2022/6/14)

A宅:昔ながらの和風建築の座敷(1日1回空気の入れ替えしますが、人の出入りはほとんどありません)


張替え時の写真 B宅(2022/5/19)

B宅:昔ながらの和風建築の座敷(週2〜3回、人が集まる。雨の日でも窓を開けます)

張替え時の写真 C宅(2022/5/28)

C宅:鉄筋コンクリート町営団地の子供部屋(朝・夕空気の入れ替え、週1〜2回掃除、昼間は学校、仕事で人の出入りはありません)

真ん中に無染土表を使用しました。乾拭き前は色合いの差を感じましたが、全体を乾拭きしてしまうと色合いの差をほとんど感じなくなりました。

張替え時の写真 D宅(2022/5/11)

D宅:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、洗濯物を干す部屋。)

張替え時の写真 E宅(2022/5/21)

E宅:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、日常生活には使用せず、部屋を通る程度。)

会社2階和室(2022/6/4)

会社2階和室:試験的に様々な畳表を使用しています。産地研修や来社の際にご覧ください。

表替えは数種類の品種を使用、裏返しは6年経過したものを混ぜて敷き込みました。
どれくらいの期間で色合いが似てくるのかも観察していきます。


折ジワの経過観察

B宅:昔ながらの和風建築の座敷(週2〜3回、人が集まる。雨の日でも窓を開けます)
敷き込み後12日が過ぎて、2022/5/31の折ジワ部分の写真です。ほぼこの時点で消えました。この畳表の重量は2.9kg/枚です。

C宅:鉄筋コンクリート町営団地の子供部屋(朝・夕空気の入れ替え、週1〜2回掃除、昼間は学校、仕事で人の出入りはありません)

敷き込み後10日経過して折ジワはほとんど確認できなくなりました。左は無染土表2.7kg/ 枚、右はひのみどり2.9kg/枚の畳表です。

会社2階和室:天気の良い日は窓を開け、週1回程度の掃き掃除。

敷き込み後10日経過して、折ジワのあった部分はほとんど確認できなくなりました。表は五八麻綿Wひのさくら2.4kg/ 枚の畳表です。


カビの経過観察

カビ経過報告(6月26日)

D宅(和風建築):6月21日 カビが発生しました。

環境:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、洗濯物を干す部屋。)

夫婦共働きのため窓を開けた換気ができず、また梅雨に入って一段と洗濯物の湿気がこもった状態となりました。

 

表替え後45日経過です。熊本は6月11日に梅雨に入り湿度が高い日が続いていました。

カビは6畳のうち、洗濯物周辺の3畳に発生。品種や無染土には関係ありませんでした。

他5人の家ではまだカビ発生が見られないため、ここでは「換気」がカビ対策の重要なポイントと言えると思います。

D宅(洗濯物を干す部屋)
D宅(洗濯物を干す部屋)
D宅:カビ発生
D宅:カビ発生


A宅(和風建築):カビ発生は見られず。

掃除の効果をみるために、実験として、座敷の真ん中から下半分は掃除をして、上半分は掃除をしてません。

A宅(2022/6/25)
A宅(2022/6/25)


B宅(和風建築):カビ発生は見られず。

換気は湿気のある日でも行っていますが、直射日光を避けるため障子は閉めています。

直射日光が入りやすい南側の無染土表は明らかに色落ちが見られますが、直射日光の入らない北側は、青味が残っており、通常の染土付きの表と変わらない色になっています。

B宅(2022/6/26)
B宅(2022/6/26)
南側の無染土が特に色落ち
南側の無染土が特に色落ち
北側の無染土は染土付きと変わらない色に変化
北側の無染土は染土付きと変わらない色に変化


C宅(鉄筋コンクリート):カビ発生は見られず。
他、変化した事として、学校帰りの濡れたカバン放置でシミがでました。

産地研修の中で変退色を防ぐ対策として「水などをこぼしたら直ちに拭き取る」とありましたが、そのまま言える事と思われます。

C宅:水分でシミ(2022/6/25)
C宅:水分でシミ(2022/6/25)
C宅:水分でシミ(カビ発生は見られず)
C宅:水分でシミ(カビ発生は見られず)
C宅:水分でシミup(カビ発生は見られず)
C宅:水分でシミup(カビ発生は見られず)


E宅(和風建築):カビ発生は見られず。

写真では分かりづらいと思いますが、ひのはるかで部分的に色が抜けているのが確認出来ました。

E宅(2022/6/26)
E宅(2022/6/26)
E宅(部分的な色抜け)
E宅(部分的な色抜け)
E宅(部分的な色抜け)
E宅(部分的な色抜け)


会社事務所2階(鉄筋コンクリート):カビ発生は見られず

会社2階東側(テーブルのあとが残りました)
会社2階東側(テーブルのあとが残りました)
会社2階西側
会社2階西側


畳替え経過報告(7月27日)

 熊本では梅雨明けは6月にしたものの、7月は梅雨末期のような長雨が続いていました。このような中、A宅の掃除をしていない部分でカビが発生しました。(A宅では掃除の効果をみるために、実験として座敷の真ん中から下半分は掃除をして、上半分は掃除をしてませんでした。)

 6月はD宅で洗濯物の湿気が原因でカビが発生しており、換気が対策のポイントといえると思いますが、今回は、掃除が対策のポイントと思われます。したがって畳表のカビ対策としては、やはり「換気と掃除」がポイントである事が言えると思います。


A宅(和風建築):A宅では、当初より掃除の効果をみるために、実験として座敷の真ん中から下半分は掃除をして、上半分は掃除をしてませんでした。なんとなくカビの匂いがし始めたような気がして、確認したところ、掃除をしていない方の四隅にうっすら白いカビが出ていました。全体を斜めから見ると掃除をしている方としていない方では色の違いが見られ、掃除をしていない方がうっすら白く見えます。

(参考までに、これぐらいのカビであれば、畳の目に沿って掃除機をかけると綺麗になります。)

掃除をしていない上半分でカビ発生

A宅(2022/7/20)
A宅(2022/7/20)

カビ発生(7月)

半分から上が掃除なしで、白くなっているのがカビ
半分から上が掃除なしで、白くなっているのがカビ


B宅(和風建築):その後もカビ発生は見られず。換気は湿気のある日でも行っていますが、直射日光を避けるため障子は閉めています。日常的に使うので、換気と掃除は行っています。

敷き込んで約2ヶ月となりましたが、この時点で無染土表と通常の染土付きの表と変わらない色になっています。

B宅(2022/7/22)
B宅(2022/7/22)
無染土表と通常の表の色合いは同じになる
無染土表と通常の表の色合いは同じになる
北側の無染土も染土付きと変わらない色に変化
北側の無染土も染土付きと変わらない色に変化


C宅(鉄筋コンクリート):カビの発生はありません。シミの後も全体が退色してきて当初より目立たなくなった気がしました。

C宅:
C宅(2022/7/24)
C宅:水分でシミ(カビ発生は見られず)
C宅:水分でシミ(カビ発生は見られず)
マット下は退色しておらず青みが残った状態
マット下は退色しておらず青みが残った状態


D宅(和風建築):環境:昔ながらの和風建築の座敷(週1回、空気の入れ替え、洗濯物を干す部屋)

週一回、空気の入れ替え、洗濯物を干す部屋。6月21日カビが発生しましたが、その後はカビの発生は見られません。

6月にカビを発生した部分。その後は発生せず
6月にカビを発生した部分。その後は発生せず


E宅(和風建築):カビ発生は見られず。

ひのはるかで部分的に色抜けが確認出来ていますが、徐々に目立たなくなってるように感じます。

E宅
E宅
部分的な色抜けも徐々に目立たなくなってきた
部分的な色抜けも徐々に目立たなくなってきた


会社事務所2階(鉄筋コンクリート):

東側:カビ発生は見られず。テーブルを置いていたところに色違いが見られましたが、時間の経過でわからなくなりました。全体の色合いも似てきました。

西側:カビ発生は見られず。陽の光の入りが少ないためと思われるが、全体の色合いにまだ差がある。

 

会社2階東側
会社2階東側
6月はテーブル置いた後がわかった
6月はテーブル置いた後がわかった
会社2階西側)全体の色合いにまだ差がある
会社2階西側)全体の色合いにまだ差がある


品種による退色や耐久性の違い観察