伝統的な和室の場合、床は畳、扉はふすま、壁は土壁で作られていて、生活の中で生じる音を吸収する働きをそなえた素材に囲まれています。
ところが20年ほど前から、外気と室内の空気を分けて密閉する建築方法が流行し、フローリング床や石膏ボードの壁にビニールクロスを貼った内装が多くなってきました。
ビニールクロスのような住宅建材は空気の密閉度を高めることは出来ますが、水分を通しにくい素材なので、湿気が部屋にこもってしまいます。
またフローリングの場合、素材が硬いので、音が吸収されにくく、部屋の中で音が反射してしまい、かえって聞き取りにくくなってしまう事があります。
一方、昔からの製法で作る畳には、床材に稲わらが使われており、衝撃を和らげるクッションのようになっています。
畳の上を歩く足音や生活音などは、クッションである畳床の中の空気の層に吸収されるので、音が静かになるのです。
畳の部屋が静かに感じられるのは、目で感じる落ち着いた雰囲気のほかに、畳そのものが持っている吸音性のおかげなのです。